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気になる病気の症状・原因・予防
社会不安障害(Social Anxiety Disorder: SAD エスエーディー)とは、人前で何かを発表するなど特定の場面に対して「強い不安」を感じることで、日常生活に支障をきたしてしまう病気のことです。
このような状況に自分が置かれたり、また、このような状況に自分が置かれることを想像するとき、「緊張したり」「不安を感じたり」することは誰でもあると思います。
SADは、このような状況で普通の人よりも「強い不安」を感じたり、それらの状況を「避ける」ことにより、毎日の生活や仕事に支障をきたしてしまう病気です。
また、SADの患者さんは、上記の他にも、普通の人であれば特に「緊張したり」「不安を感じたり」することのない次のような状況でも「強い不安」を感じることがあります。
SADの患者さんが、このような状況に「強い不安」を感じるとき、具体的には次のような症状が現れてきます。
SADの患者さんは、人前で自分が何かおかしなことをしてしまうのではないかという「強い不安」を抱き、また、それを他の人に気づかれまいとして、不安のもととなる状況を避けようとします。
例えば、「話をしているときに声が震えたり、顔がひきつったりしていると他の人に気づかれて恥ずかしい思いをするのではないかと考えて非常に不安になる」、「手が震えていることを気づかれるのではないかと心配になり、他の人がいるところで食事をしたり、字を書いたりすることを避ける」といったことです。
SADは、以前「対人恐怖症」と呼ばれていたものの一部分の症状(strikethrough: 疾患(病気))であり、患者さんの特徴として次のことがあげられます。
SADは、以前は「まれな病気である」という認識でしたが、 「全人口の約10~15%の人が罹患(りかん:病気にかかること)している」という海外の大規模調査の報告もあり、現在ではSADは決して「まれな病気ではない」と認識されるようになっています。
SADは、10代半ばから20代前半で発病することが多く、性別では男性より女性のほうが多いと言われています。なお、アメリカで行われた調査によれば、SADの発病年齢の平均は15歳となっており、不安をもつ障害の中で最も発病年齢が低いと言われています。
SADの診断基準には、米国精神医学会編「精神疾患の(strikethrough: 分類と診断の手引)診断・統計マニュアルDSM-Ⅳ」、WHO編「精神および行動の障害」ICD-10 などいくつかあります。
例として、前者の基準をいくつか示してみます。
※罹患(りかん)期間:症状が出始めてから現在に至るまでの期間のことです。
SADは、「強い不安」を感じる頻度により、「全般型」「非全般型」「限局型」の3つのタイプに分けることができます。
分類 | 症状 |
---|---|
全般型 | ほとんど全ての社会的状況において「強い不安」を感じる。 |
非全般型 | 2,3の社会的状況において「強い不安」を感じる。 |
限局型 | 1つのみの社会的状況において「強い不安」を感じる。 |
海外では、SADは一般的に理解度が低く、治療の機会を得にくい病気とされています。
左のグラフにもあるとおり、海外で行われた調査によれば、SADの患者さんの約2/3は病院に行っておらず、また、病院に行っている場合でも「自分がSADであると認識して受診した」患者さんは3%にすぎないという結果となっており、治療の機会を自ら逃していることがうかがえます。
一方、日本では、SADという名称や病気の症状については、あまり認知されておらず、その症状の原因を「自分の性格のせい」であると思って、治療を受けていない(病院に行っていない)方が多いようです。
SADは発病すると、他の精神疾患(うつ病、アルコール中毒、パニック障害など)を併発する割合が70%を超えるとも言われていますので、SADの症状が現れている場合は、それは「性格のせい」ではなく「病気である」と認識して、早めに専門医(精神科や心療内科)の診断を受けてください。
SADの治療法には大きく分けて、薬物療法と認知行動療法の2つがあります。実際の治療では、この2つの治療法を併用することが多くなっています。
最近の研究では、SADは脳(セロトニン神経系とドーパミン神経系)の機能障害により発症するのではないかと推測されており、現在もその発症原因について、世界中で研究が進められています。
海外では、早い時期から薬物による治療の研究が盛んに行われており、既にSADの治療薬として承認され、患者さんの治療に使われている薬(一般名:パロキセチンなど)もあります。
一方、日本では、SADという病名で国(厚生労働省)に承認されている薬は一つしかなく(一般名:フルボキサミン)、患者さんの症状により抗うつ薬や抗不安薬なども治療で用いられています。
現在、SADという病名で承認を受けるために進められている治験(国から薬として承認を受けるための臨床試験のことです)もあります。
認知行動療法は薬物療法より歴史が長く、精神療法の中でも重要と考えられている治療法ですが、日本ではあまり知られていません。 認知行動療法では、エクスポージャー、ソーシャルスキルトレーニング(社会技術訓練)などの方法を用いて、実際に恐怖を感じる場面に直面したときに感じる不安感を自分自身でコントロールできるようにします。
薬物療法と違い、副作用が少ないのが利点ですが、患者さん自身もかなり努力しなければなりません。そのため、認知行動療法では、問題点を順番に洗い出していき、解決できそうな問題、患者さん自身も大きな不安と感じないような小さな問題から順番に解決していくという方法がとられます。
方法 | 内容 |
---|---|
エクスポージャー |
|
ソーシャルスキルトレーニング(社会技術訓練) |
|
不安対処訓練 |
|
認知修正法 |
|
※治療に当たっては、必ず専門医にご相談ください。
治験は本人の自由意志で参加することが出来ます。
強制ではありません。治験を途中で中止することも可能です。
(負担軽減費の例:2泊3日×2回⇒8万円)
被験者さんの診察待ち時間を短くするために、治験専門の外来診察が設置される場合があります。
治験に参加することは、病気で苦しんでいる患者さんに役立つことになり、医療の発展という社会貢献につながります。
製薬メーカーが開発した薬剤を医薬品(お薬)として世に出す為には、事前に厚生労働省の承認・認可を得ることが法律で義務化されています。
この承認を得るために行う「治療を兼ねた試験」を「治験(ちけん)」と言います。
治験は、前臨床試験で有効性や安全性を十分に確認した後に、健康な人や対象疾患の患者様に対して実施されます。
私たちが普段使う薬は全て、多くの一般の方々が治験ボランティアとして治験に参加した結果、承認されたものです。
同じ悩みを持つ多くの患者様のためにも「治験」へのご協力をお願いいたします。
治験に自発的に参加・協力していただける方を「治験ボランティア」と呼んでいます。
治験参加中は、交通費や検査等の負担を軽減する目的で、負担軽減費が支払われます。
安全性や吸収・排泄等の確認
用法・用量の確認
既存薬やプラセボ等との比較
治験を経て承認された薬が市販された後、より多くの患者様の治療で使われたときの効果や安全性を確認
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